サブプライムローン問題

最近の金融市場は株安、円高、原油高騰など何かと不安定である。そして、新聞でよく目にするサブプライムローンとは何か?私たちの生活にも直接影響を及ぼしている原油高騰がなぜ起きているのか?実はこれらの問題は複雑に絡まりあっているのである。

サブプライムローンとは

アメリカの金融機関が、過去に破産したり、担保を差し押さえられるなどした比較的信用力の低い人に貸し出す住宅ローンのことである。優遇金利を「プライム」ということに対して、その補助的なローンということから「サブ」が付けられている。通常のローンと比べて信用力・返済力を調べる審査基準が緩い為、低所得者や返済を滞らせたことのある人でも借りやすいが、金利は高い。ただ、金利が段階式に上がるため、始めの数年は通常のローンよりも返済負担が少ないのが特徴であり、落とし穴でもある。

現在では住宅ローンを借りる人の15%がこれを利用しているという。これまで表面化しなかったのは、2003年後半以降、アメリカの住宅ブームにより住宅の値上がりが続き、借り手はその住宅の価格上昇分を担保にして、普通の住宅ローンである「プライムローン」(金利は安いが審査基準が厳しい)に借り換えることができていた。しかし、価格の伸びが止まってこの手法が使えなくなり延滞や差し押さえが増えた結果、不良債権化したのである。そして今年3月、大手住宅ローン会社が経営難に陥ったのをきっかけに金融市場が混乱し始めた。

サブプライムローンと株安、円高、原油高騰の関わり

サブプライムローン債権は、小口証券化によりさまざまな金融商品に組み込まれ、高利回り商品として国際的に販売されていた。そのため、これらに投資していたアメリカ・ヨーロッパの金融機関やヘッジファンドが相次いで損失を被り、世界的な信用不安が拡大した。その結果、リスクの高い株式は売られ、より安全な国債や他の有利な運用先へ向かう動きが加速度的に出て、世界同時株安を引き起こしたのである。

その投資対象として注目されたのが、原油市場であり、結果、原油価格高騰に繋がった。
また、円高もサブプライムローンによる株安が原因で起きた。
ヘッジファンドなどは金利の低い日本の銀行から円を借りて、それを各国の株式や債券などの購入に充てるという“円キャリー(円借り)取引”を拡大させてきた。

円を借りてドル・ユーロと換金し、大量の円が外国為替市場に出回ったため、一時は、円安の大きな原因となっていた。ところが、サブプライムローン問題によって世界同時株安が起きたことで、欧米の株式を購入していたヘッジファンドは株を売り、逆にドル・ユーロを円に換えて返済へ回す。それによって円高が急速に進んだのである。上図の矢印の向きと全て逆の流れとなる。

円高は、つまりドルやユーロ安であるから、例えば、それまで1ドルで買えた100円の物は1.5ドル出さないと買えないことになる。相対的に日本の製品の価格が上がるのである。すると、日本経済を支える自動車産業など、輸出によって収益を得ている産業の売上げが伸び悩み、日本経済も悪化していくことになる。

ヘッジファンドとは、株、債券、為替、商品、不動産、金など市場性のある金融商品などの相場動向を他社に先駆けて察知して大量の資金を投下し、予測した相場動向が訪れればその先の相場動向を読んで再投資する投機筋のファンド(基金)のこと。
一般の公募の投資信託とは異なり私募によって機関投資家や富裕層から私的に資金を集め、その豊富な資金量と短期的な投資行動から、相場形成に非常に大きな影響力を与えている。当初は、相場下落リスクを空売りなどの手法でヘッジ(危険回避)することを狙いとしたため、"ヘッジ"ファンドと呼ばれている。

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